ニュースや新聞などでPBR、PER、ROEという言葉を聞いたことがありませんか?実は今の日本企業ではこれらの数値を改善するような経営が意識されているんです。
それではこれらはどのような数値なのでしょうか?本稿では内容や計算方法などを解説していきます。
東京証券取引所の要請
東京証券取引所は2023年3月にプライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象に、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を実施しました。
これは日本の株価特定指数であるTOPIXに構成される企業のPBRについて1倍割れしている企業が40%以上(2022年7月時点)あり、アメリカのS&P500の構成銘柄のPBRが5%程度と低い水準であることが問題視されました。これは日本企業の収益性や成長性が市場に評価されていないことを表しています。
東京証券取引所が行った調査によると、従来、日本企業は市場(投資家)が売上高や利益など損益計算書の数値を重視していると考えていました。しかし、市場(投資家)はPERやPBRなど貸借対照表の数値を重視して投資をしていることが明らかになり、企業と投資家で目線がズレていたことがわかりました。
そこで東京証券取引所は日本企業に対して、市場(投資家)の目線に合わせた経営に向けて改善していきましょうと要請したわけです。
株価の評価指数
PBR、PER、ROEは株価を評価するための代表的な指数です。PBR、PERは株価の割安さを測る指標であり、ROEは企業の収益性を測る指標です。
これらの指標は多くの投資家にとって投資をする上での判断材料となります。株価が割安か割高か、また企業の収益性について確認することは重要です。これらの評価指数はM&Aにおける企業買収の際の価格評価などにも用いられます。
PBR(株価純資産倍率)
PBR(株価純資産倍率)とは、株式の時価が1株あたりの純資産の何倍で取引されているのかを示しています。企業の純資産と発行済みの株式の時価の差を評価し、株価が割安か、割高かを計る際に用いられます。一般的に、PBRが低いほど割安と考えられています。
計算式は「PBR=株価÷1株あたりの株主資本(純資産)」で求めることができます。
理論上、企業は純資産以上の価値があるためPBRが1倍を下回ることはありません。しかし実際はPBRが1倍を下回る企業が多くあり、冒頭でも紹介したように2023年3月に東京証券取引所は上場企業に対し企業価値向上のためPBRを1倍以上にするよう改善要請をしています。
この要請に経営者が応えはじめ、投資家の期待を上げたことが現在の株高につながる一つの要因として考えられます。
PER(株価収益率)
PER(株価収益率)とは、株式が1株あたりの当期純利益の何倍で取引されているのかを示しています。株価が割安か割高かを判断する指標で単位は倍となります。
計算式は「PER=株価÷1株あたり当期純利益」となります。例えば1株あたりの株価が1,000円、1株あたりの当期純利益が50円だった場合、1,000円÷50円=PER20倍となります。理論上、株主は1,000円の投資額を20年で回収することができるということになります。
このように株式投資においてPERは現在の企業が生み出す利益を参考にして将来性を計る数値となります。PERに目安となる数値基準はなく、業種などでもPERは異なりますが、日経平均株価のPERが約15倍で推移していることから、上場企業についてはおよそ15倍が一つの目安とされています。
PERはPBRと組み合わせることで株価が適正かどうかを正確に判断することができます。
PERは企業の「利益」を基準に判断し、PBRは企業の「資産」を基準に判断します。そのため投資をする際、企業の「収益性」か「資産」のどちらを重視するかを考えながら行うといいでしょう。
ROE(自己資本利益率)
ROE(自己資本利益率)は会社の資産(自己資本)をどれだけ効率よく活用して利益を上げているか、つまりどれだけ多くのリターンを得られているかを示す指標です。
計算式は「ROE=(当期純利益÷純資産(自己資本))×100」です。一般的にはROEが10%以上なら優良企業といわれ、日本株の平均は約8%となっています。
例えば当期純利益が300万円、自己資本が1,000万円の企業の場合、
(300万÷1,000円)×100=30%
となり、収益性が高く投資するにあたってリターンを得られる可能性がある企業と考えることができます。
ただしこれらはあくまで指標であり、ROEが高ければ優良企業であると一概に言い切れません。業界によって設備投資による負債の増加や借入金を活用した利益の増加などが考えられるため、必ずしもROEが高ければ自己資本を効率的に活用しているとは限らないからです。そのため企業の財務体質も見極める必要があります。
引用元:PER、PBR、ROEの関係とは?目安や計算式をわかりやすく解説
PBR・PER・ROEとの関係
先述したようにPBR・PERは株価が割高か割安かを判断する指標であり、ROEの自己資本を活用した収益力を計る指標です。そのため適正な投資を行うためには、少ない自己資本を効率的に使って収益を上げている企業を自己資本よりも安い株価で買うことです。それではこれらはどのような関係性があるでしょうか?
一般的にROEの指数が高い企業は株価が上昇しやすいです。それはROEが上がることによってPERとPBRに影響を及ぼすからです。
3つの指標を計算式に表すと「PBR=ROE×PER」となります。そしてこの式は「PER=RBR÷ROE」に変換することができます。
この式から分母であるROEが高くなれば相対的にPERが低くなります。PERは低いほど割安である指標となるため、ROEが高くPERが低い企業とは収益力が高く株価に対して割安な、株価の上昇が期待できる企業であるといえます。
投資する上で気をつけること
これまでPER、PBR、ROEはどのようなものかと関係性を解説してきました。しかしこれらの指標はあくまで目安であり、株価は企業の経営方針や財務内容、政治など様々な要因が絡み合って上下します。
そのためこれらの数値だけをもとに投資先を判断するのではなく、数ある企業を絞り込むための一つのツールとして活用し、個別ごとに設備投資や経営方針、財務内容なども見て判断するようにしましょう。